世界に誇る日本の伝統工芸品、漆器の成り立ちとは?

「全日本人味噌汁椀輪島塗化計画」ブログでは、輪島塗の食器をもっと普段の食卓で使ってほしいと願い、とくに味噌汁椀こそが輪島塗の魅力が一番伝わると考えている田谷漆器店・田谷昂大が、輪島塗の良さや使い方、味噌汁椀をはじめとするお勧めのアイテムのご紹介、さらには漆器や伝統工芸の話もしていきます。
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日本には数多くの伝統工芸品がありますが、なかでも世界で「japan」と呼ばれるほど知名度が高く、評価されているのが漆器です。

そもそも漆器は日本独自のものではなく、中国をはじめとするアジア諸国で作られてきた伝統工芸品ですが、どのように日本に根付き、独自の発展を遂げてきたのか? 

そこで今回は、日本の伝統工芸である漆器の歴史や特徴についてご紹介したいと思います。

目次

1.稲作よりも前から漆工芸と親しんできた日本人

2.東北から沖縄まで。漆器の産地と特徴

3.輪島塗、金沢漆器、山中漆器。石川県の漆器が栄えたワケは?

4.漆器のある暮らしで日々を豊かに

 

1.稲作よりも前から漆工芸と親しんできた日本人

日本における漆工芸の歴史は縄文時代にさかのぼり、北海道の垣ノ島B遺跡から発掘された赤色漆の副葬品は9000年前のものと推定されています。つまり、稲作が始まるよりずっと以前から、日本では漆が利用されていたことに。

漆の原料はウルシノキという落葉高木から採取した樹液ですが、採取するには道具や技術が必要であり、しかも乾燥前の樹液に触れると肌がかぶれる恐れもあるため、縄文時代から漆を使う技術があったとは驚きです。

縄文時代以降、漆器などの遺物は全国で出土されていますが、漆芸としての作品や技術が日本に伝わったのは6世紀頃。仏教とともに大陸から伝来しました。

朝鮮半島から渡来した漆工技術者たちによって漆工技術が発展し、さらに遣唐使など大陸との交流を通じて研出蒔絵(とぎだしまきえ)の源流となる末金鏤(まっきんる)や、螺鈿(らでん)といった加飾の技法が伝来。

鎌倉時代に高蒔絵(たかまきえ)、室町時代には沈金(ちんきん)といった新たな技法が加わります。

こうして発展した日本の漆器が海外で高く評価されるようになったのは室町時代末期、ヨーロッパの大航海時代のこと。日本を訪れたヨーロッパ人たちは漆器の美しさに感動し、キリスト教の宗教用具や王室貴族向けの調度品の制作を依頼します。

南蛮漆器と呼ばれたこれらはヨーロッパ文化に影響を与え、今では一般的なピアノ塗装の艶やかな黒色も、漆器の漆黒を模したといわれています。

Point
ヨーロッパ文化に影響を与えた“japan”漆器の美

 

2.東北から沖縄まで。漆器の産地と特徴

漆器は奈良や京都などの古都で花開きましたが、日本各地へと産地が広がりを見せたのは江戸時代。参勤交代の際に持参する献上品として、全国の大名たちがこぞって自藩の漆器を特産物にしようと奨励してからでした。

その名残として全国各地に今も漆器の産地があり、なかでも23の産地が伝統的工芸品産業の振興に関する法律に基づく伝統的工芸品として経済産業大臣に指定されています。

・青森県/津軽塗
・秋田県/川連(かわつら)漆器
・岩手県/秀衡(ひでひら)塗、浄法寺(じょうぼうじ)塗
・宮城県/鳴子塗
・福島県/会津塗
・新潟県/村上木彫堆朱(ついしゅ)、新潟漆器
・神奈川県/鎌倉彫、小田原漆器
・長野県/木曽漆器
・岐阜県/飛騨春慶
・富山県/高岡漆器
・石川県/輪島塗、山中漆器、金沢漆器
・福井県/越前漆器、若狭塗
・京都府/京漆器
・和歌山県/紀州漆器
・山口県/大内塗
・香川県/香川漆器
・沖縄県/琉球漆器

木地に文様や絵柄を彫り込んで漆塗りを施す「鎌倉彫」や、琥珀色の光沢の奥から浮かび上がる木目が美しい「飛騨春慶」など産地によってさまざまな特徴があり、風合いの違いを楽しむことができます。

■Point
参勤交代によって全国へ広がった漆器の産地

 

3.輪島塗、金沢漆器、山中漆器。石川県の漆器が栄えたワケは?

輪島塗を含む3つの漆器産地が伝統的工芸品に指定されている石川県。日本有数の漆器産地になった理由として、次のような要因が挙げられます。

まず、石川県には漆器の木地に適したケヤキやアスナロなどの木が多く成育し、日本海に面した湿度の高い気候が、湿度によって固まる性質をもつ漆と好相性だったこと。

また、江戸時代半ばから日本海側で運行された商船「北前船(きたまえぶね)」の寄港地であったため、石川県の漆器が全国へと顧客を開拓できたこと。

さらには「加賀百万石」として知られる日本一の国持大名だった加賀藩による庇護のもと、輪島塗や金沢漆器の技術が高められたこと。

石川県の3つの漆器は、それぞれ「塗りの輪島(輪島塗)」、「蒔絵の金沢(金沢漆器)」、「木地の山中(山中漆器)」と呼ばれます。

輪島塗はていねいな漆塗りによる堅牢優美さ、金沢漆器は金蒔絵の華やかさ、山中漆器は木地を挽く高い技術を特長としています。

■Point
それぞれの強みが個性となって開花した石川県の漆工芸

 

4.漆器のある暮らしで日々を豊かに

漆器といえば、お正月や慶事など「ハレの日」に使うもの。というイメージがありますが、かつては日用の器としても用いられ、私たちの生活に身近な存在でした。

木と漆で作られてきた日本の漆器は、使うほどに風合いが増し、修理すれば何世紀にもわたって使い続けることができる。究極のエコロジカルな日用品といえます。

漆器特有のなめらかな口当たりと、手に吸い付くような持ちやすさ、見た目では想像できないほどの軽さ。抗菌・断熱といった機能性を兼ね備え、鑑賞する楽しさもある。

創業当時から変わらないのは、愚直にコツコツと良いものを作り続けるという輪島塗のスタンスです。

時代の流れに応じた商品開発も行っていますが、それはデザインにおいて見せ方を変えているだけであって、天然素材を使い手作業で作り上げるというやり方はずっと変わりません。

何があろうと、時代に流されない。

それが輪島塗が伝統工芸として今日まで続いてきた理由であり、本物の良さに理解のあるお客さまによって支えられてきました。

漆器がもたらしてくれる日々の豊かさを、一人でも多くの方に感じていただきたい。そのためにも、輪島塗をはじめとする伝統工芸の魅力を、これからも発信していきたいと思います。

 

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