日本三大漆器のひとつでもある輪島塗。
輪島塗のすごさは、精巧なつくりや丈夫さに加え、優美で華麗な加飾にあります。
100を超える製造工程を、それぞれの職人が分業する特殊な作り方。定められた規定を遵守したものだけが輪島塗と称される、徹底された品質管理。
輪島塗には多くの魅力が詰まっているのです。
今なお高級漆器の伝統工芸品として、国内外から高く評価されている輪島塗。
そのすごさや魅力について紹介したいと思います。
輪島塗漆器の老舗専門店「田谷漆器店」では、輪島塗の通販のほか、法人のお客様向けに輪島塗を使用した商品開発・OEMやノベルティの製作を行っています。
気になる方は以下のボタンから確認してみてください。
目次
輪島塗とはどんな漆器?産地はどこ?
輪島塗の産地は、石川県輪島市。
日本海に面した能登半島北岸の港町です。
原料となる漆の木や、器のベースとなるケヤキやアテ(アスナロ)の木が豊富にあることから、輪島塗は発展していきました。
会津塗(福島)、紀州塗(和歌山)と共に日本三大漆器と称される輪島塗ですが、現存する最古の漆器は室町時代と長い歴史を持ちます。
また、品質の良さを維持するために、細かい基準が設けられているのも輪島塗の特徴です。
技術や技法には次のような指定がなされています。
下地造りは、次の技術又は技法によること。
(1)
木地に生漆を塗付した後、「着せもの漆」を塗付した麻又は寒冷紗を用いて「布着せ」をすること。
(2)
生漆に米のり及び「輪島地の粉」を混ぜ合わせたものを塗付しては研ぎをすることを繰り返すこと。
輪島塗 | 伝統工芸 青山スクエア
また、原材料は自然素材のみを使うことが定められており、以下のような規定も設けられているのが輪島塗の特徴です。
原材料
1
漆は、天然漆とすること。
2
木地は、ヒバ、ケヤキ、カツラ若しくはホオ又はこれらと同等の材質を有する用材とすること。
輪島塗 | 伝統工芸 青山スクエア
輪島塗とは何がすごい?7つの特徴と魅力
輪島塗を伝えるうえで欠かせない、7つの特徴と魅力を紹介します。
- 沈金や蒔絵を通じた美しい加飾
- 呂色工程で生まれる表面の光沢
- 漆塗料による防腐性・抗菌性
- 天然の木地と漆の重ね塗りを通じた断熱性
- 漆独特の手触りや口当たりの良さ
- 木地と漆のおかげで軽くて丈夫
- 欠けても割れても修理により半永久的に使用可能
①沈金や蒔絵を通じた美しい加飾
輪島塗の美しさのひとつに、沈金や蒔絵などの加飾技術があります。
沈金(ちんきん)とは、塗面を彫ってできたくぼみに漆をすり込み、そこへ金・銀の箔や粉を埋めて模様を描く技法。
彫る溝の深さや角度によって立体的に表現することも可能です。
漆は金・銀の箔や粉を固定する接着剤の役割をします。
蒔絵(まきえ)は、漆器の表面に漆で絵柄を描き、金・銀の箔や粉を蒔き付けて付着させる技法。
平蒔絵・研出蒔絵・高蒔絵と大きく分けて3つの手法があります。
朱塗りや黒塗りの輪島塗に、沈金や蒔絵の技巧が施されることで、漆器の魅力を際立たせ「堅牢優美」と称されるにいたるのです。
②呂色工程で生まれる表面の光沢
呂色(ろいろ)とは、輪島塗に艶を出すため磨き上げる仕上げ工程のこと。
表面を柔らかい炭で研ぎ、呂色漆を塗って磨き上げる、という作業を繰り返します。
呂色は、木地のやわらかさや塗りの乾き具合などで磨き方や回数を変える、とても繊細な仕事です。
輪島塗の美しい艶は、呂色師の技術によって生まれています。
③漆塗料による防腐性・抗菌性
漆塗料を塗布した面は、抗菌・殺菌作用があり、虫や菌などの繁殖を防ぐ働きがあるといわれています。
また、防腐・防虫・防水のなどの効果があり、器そのものの強度を強くするといった面で優れた塗料でもあります。
漆塗料は、年月を増すごとに硬化し透明になっていく性質を持ち、塗った直後よりも何年も使用したあとの方が艶が増し美しくなりますよ。
④天然の木地と漆の重ね塗りを通じた断熱性
輪島塗は、天然の木で作られた木地と、しっかりと施された下地、幾重にも塗り重ねた漆によって熱が伝わりにくい性質を持ちます。
さらに輪島特産の地の粉である珪藻土は、主成分がガラス質で耐熱レンガにも使われるものでもあります。
この地の粉が含まれることにより、さらに断熱性に優れた漆器となります。
熱いコーヒーや味噌汁を飲むときに「持ち手や器まで熱々で持てない」といったことはおこりません。
⑤漆独特の手触りや口当たりの良さ
人の手や口が漆器に触れたときの優しく吸い込まれるような感覚は、漆独自の特徴です。
漆器は完成後もゆっくりと空気中の水分を取り込んで、より強くなっていきます。
漆器に触れると、漆が人肌の水分を吸うため、他にはない独特な手触りになります。
⑥木地と漆のおかげで軽くて丈夫
輪島塗の木地は自然乾燥で1年ほど寝かせたあとに加工しています。
さらに乾燥させることで、軽くて丈夫、変形やひび割れを起こしにくい器を作ることができます。
一方、木地に塗る漆は、じっくりと時間をかけて硬化。
完成後も固まりつづけるため、滅多なことでは剥げたり欠けたりしません。
⑦欠けても割れても修理により半永久的に使用可能
もし欠けたり割れてしまっても、修理できるのが輪島塗の魅力のひとつ。
堅牢な下地によって、傷や剥げは深部まで及びません。
そのため、表面を研ぎ落として上塗りを施すだけで、本来の姿によみがえらせることができます。
長く使い続けて愛着が増している漆器を、手放すことなく使えるのは嬉しいポイントです。
輪島塗の歴史はいつ始まった?有名になった理由
現存する最古の輪島塗は室町時代の「朱塗扉(しゅぬりとびら)」とされていますが、技法が確立したのは江戸時代といわれています。
それまでは、能登で暮らす人々のために作られていた漆器ですが、江戸時代に入り脚光を浴びるようになります。
それは、購買力をつけた民衆が生活用の漆器を購入するようになったためです。
漆器の需要が高まるなか、輪島で「地の粉(じのこ)」と呼ばれる珪藻土が発見されると、さらに多くの人に利用されるようになります。
「地の粉」を漆に混ぜ下地に用いた結果、輪島塗の強度が大幅にアップ。
また、布で補強する布着せの技術「本堅地技法」の確立により、丈夫さと剥げにくさが増し、人々から評価されるようになっていきました。
都から離れた遠方の立地条件も重なり、京都などの名高い漆器産地との差別化をよぎなくされていた輪島塗ですが、時代の発展とともに販路を拡大。
その後、1977年に全国初の国の重要無形文化財に指定されます。
ちなみに「地の粉」は、現在も輪島の職人しか使えない、貴重な材料となっています。
輪島塗の作り方の特徴|強さと美しさを生み出す秘密
輪島塗は、作り方に独自の特徴を持ちます。
そしてその作り方が、美しさを生み出す秘密に繋がっていくのです。
輪島塗の作り方において、最も特徴的なのは「分業制」であること。
124にもおよぶ製造工程は、高度な技術を持つ職人たちで分業されています。
全国でも他に類を見ないほど細分化された製造工程は、丈夫さと美しさを徹底的に追及した職人たちが、技を極める過程で生み出したと考えられています。
さらに1780年代には、製造工程の規定や価格の協定、違反者への罰則などを定める大黒講が組織され、高い品質を維持するための取り組みが始まりました。
輪島漆器商工業協同組合も、輪島塗の製造工程ガイドラインを定め、価値の向上に取り組んでいます。
また、輪島塗の強さと美しさを作り出す秘密は、時間をかけてゆっくり作ることにあります。
全ての工程に時間をかけてゆっくり作ることで、漆の匂いの残留や漆かぶれを未然に防ぎ、より心地よく輪島塗を使えるようになるのです。
漆は完成後もかたまり続けます。急いで仕上げてしまうと脆弱な器になりかねません。
昔ながらの手仕事で、職人たちが漆を対話をしながらゆっくり作る。
細分化された工程と、時間をかけた職人技により、しなやかな強さと温もりのある美しさを備えた器が作られます。
輪島塗を買うなら何がおすすめ?
実用の器を原点とする輪島塗は、日常の生活での普段使いでこそ、その真価を発揮します。
そこで、おすすめの輪島塗を紹介します。
五感を癒す、自然素材ならではの心地よさを体験してみてください。
お椀や汁椀|自分用や夫婦椀として贈答品におすすめ
お椀や汁椀は、輪島塗を代表する漆器です。長く愛用できるので、夫婦椀としての贈答品におすすめですよ。
「日々」という汁椀は、性別や年齢、世代を問わず、末永く愛用できるようにシンプルなデザインで作られています。
カットしたフルーツを入れたり、お漬物を入れてみたり。
定番だからこそ一味違った使い方をしてみてはいかがでしょうか。
箸|値段が比較的安くお土産におすすめ
箸は値段が比較的安いため、お土産にもおすすめです。
「所作」は五角形乾漆橋(ごかっけいかんしつばし)で作られています。
機械では作れない五角形のかたちに、乾漆(かんしつ)という技法を用いています。
これは、ガラス板の上に漆を薄くひき、固まったあとに剥がして粉砕した漆を漆器の表面に蒔きつける技法。
凹凸がでるため、つるっとした麺や、ぬめりのある里芋などがつかみやすくやすくなります。
重箱|ハレの日のお弁当におすすめ
家族の「ハレの日」に重箱はいかがでしょうか。
二段重の「日本昔話」は、一年中使用できるようにと、四季の自然と昔話の登場人物を組み合わせた文様をほどこした蓋が四種類あります。
この蓋には、伝統的な蒔絵の技法、研出蒔絵(とぎだしまきえ)が使われています。
これは、色漆を塗って金を蒔き、また同じ色漆を上から塗って研ぎ出すと、色の中からふわりと金が現れる技法。
昔話の登場人物が、色鮮やかに表現されています。
輪島塗の日頃のお手入れ方法と注意点
輪島塗のお手入れは、手間がかかりそうなイメージを持たれがちですが、そのようなことはありません。
輪島塗のお手入れはとても簡単。それは「柔らかいスポンジと中性洗剤で優しく洗う」だけ。
そもそも輪島塗は日常づかいの器として発展してきた漆器です。
使用されている漆は、とても優れた天然塗料で、酸やアルカリ、さらに熱湯や湿気にも強い特徴があります。
少々手荒く扱ったところで、簡単に割れたり欠けたりすることはありません。
補足程度になりますが、日頃のお手入れでは以下の点を意識するとよいでしょう。
- 食事をした後は早めに洗う
- ほかの食器やカトラリーと分けて洗う
- ぬるま湯で洗う
時間が経った食器は食べ物が固まり落としにくくなりますし、ガラスやフォークなどと一緒に洗うと傷がついてしまうかもしれません。
一方で、自然素材で出来た漆器ゆえの弱点もあります。
長く利用するための注意点をいくつかご紹介したいと思います。
輪島塗の弱点と使い方の注意点
弱点 | 注意点 |
熱風を使う乾燥に弱い | 食器洗浄機や食器乾燥機、電子レンジの使用は避ける |
紫外線に弱い | 直射日光のあたる場所に長時間置かない 日当たりのいい場所で乾燥させたい場合は、布などを被せて対策する |
ひとつめは「乾燥」です。気候による乾燥であれば問題はありませんが、食器洗浄機や食器乾燥機、電子レンジの使用による乾燥は避けてください。
うっかり使用してしまうと、漆本来の艶を損ない、白く変色してしまいます。
特に電子レンジの利用は、輪島塗の芯である木地を歪ませてしまい、補強する下地や表面の漆にも影響を受けるため、修復が難しくなってしまいます。
くれぐれも電子レンジだけは使わないよう、注意してくださいね。
ふたつめは「紫外線」です。直射日光の当たる場所に長く置いておくことは避けましょう。
日当たりのいい場所で乾燥させたい場合は、布などを被せて対策してください。
法人|輪島塗を使用したOEMや商品開発も増えている
近年では、伝統的な輪島塗の技術を応用した商品開発も増えてきました。
田谷漆器店がOEMとして製作を行った輪島塗商品をいくつか紹介したいと思います。
田谷漆器店がOEMとして制作を行った輪島漆器商品
誠漆万年筆 | ワンチャー万年筆の商品3ヵ月以上の時間をかけて作られる輪島塗の万年筆 | 製品ページ |
軽井沢アクレイムコレクション | 金箔が貼られたウイスキーボトルが、輪島漆器のキャビネットに収納されている | 製品ページ |
JALオリジナルカップ | JALのロゴが蒔絵で施された輪島塗グラデーションカップぐい呑み・ゆらりカップ・フリーカップ・ミラーを展開 | 公式ページ |
万年筆やウイスキーのキャビネットなど、輪島塗は幅広く展開されています。
今後の商品展開も楽しみですね。
輪島塗漆器の老舗専門店「田谷漆器店」では、上記のほかにも多くの輪島塗OEM開発やノベルティ開発を手掛けています。
輪島塗をブランド価値を使用して高価格帯の製品を開発したい企業様や海外のお客様向けの製品が欲しいという企業様には特におすすめです。
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輪島塗に関する疑問を解決
輪島塗に関する疑問についてお答えしていきます。
本物の輪島塗はどう見分ける?
近年「漆器」と称されるものは、すべてが天然木で作られているわけではありません。
プラスチックなどの合成樹脂に漆が塗られたものも「漆器」として販売されていますので、本物の輪島塗かどうかは、天然木で作られているかどうかで見分けましょう。
次の項目に当てはまる場合は、天然木の漆器である確率が非常に高いです。
- 水に浮く
- 指ではじくと軽い音がする
- 冷えた漆器に息を吹きかけると木目が見える
- 熱いものを入れても器が熱くならない
とはいえ購入時に上記4点を確かめるのはなかなか難しいかと思います。
もし輪島朝市などに訪れて対面販売で購入する場合は、お店の人に聞きましょう。
皆さん正直に答えてくれますよ。
通販で購入する場合は、信頼できるサイトかメーカー直販サイトで購入するのがおすすめです。
なお、当社「田谷漆器店」の輪島塗は全て石川県産の天然木を使用しており、輪島塗の規定に従って全て手作りで製作しています。
輪島塗が長持ちするのはなぜ?
輪島塗が長持ちする理由には、輪島独自の「地の粉」や補強技術、漆が持つ強さにあります。
輪島塗は、輪島でしかとれない「地の粉」を漆にまぜた下地を塗って木地を補強しています。
また、お椀など縁が欠けたり割れたりしやすいものには布をあてがい補強する「布着せ」も、輪島塗ならではの工程。
漆が持つ、耐久性、耐水性、防腐性に、この工程が加わることで、より頑丈に仕上げられ、長持ちする漆器になるのです。
おしゃれな輪島塗でおすすめは?
おしゃれな輪島塗は、たくさん販売されていますが、そのなかでも、おすすめの2点を紹介します。
輪島塗のぐい吞みです。「魚泳グ」の底には、鯉・河豚(ふぐ)・鯛、3種類の魚が、気持ちよさそうに棲んでいます。
お酒を注ぐことで立体感が増し、まるで生きているかのよう。
古典蒔絵の文様を現代的にアレンジした、少し寸足らずで可愛らしい魚たちの姿に親しみやすさを感じます。
輪島塗の大皿「太陽の器」。直径37cmの生命力あふれる大皿です。
無国籍なテイストを漂わせる平らなフォルムは、オードブルやサラダ、肉や魚のグリル、フィンガーフードや寿司など、どのようなジャンルの料理を盛り付けてもサマになります。
付属の皿立てに立てかけると、インテリアとなり、空間に華やぎが生まれます。
輪島塗の値段が高い理由は?
輪島塗が高いのには、理由があります。
ここまで読んでくださった方は、もうお気づきかもしれませんね。
輪島塗の材料である漆や木材はすべて天然で、高品質なものが使われていること。
100を越える細かな製造工程を、熟練した職人たちで分業し手作業で進めていることが、輪島塗の価値を高めています。
輪島塗の体験や見学は何がどこでできる?
輪島塗の体験や見学をしてみたい。そんなときは、体験施設を利用しましょう。
初めてでも簡単に輪島塗体験ができます。
石川県漆芸美術館では、沈金スプーン色付け体験や、沈金箸の色付け体験ができます。
事前の予約が必要となりますので、ご注意ください。
輪島工房長屋では、漆塗りパネルや箸に沈金を施す体験ができます。蒔絵の体験も可能ですよ。
10名以上は予約が必要、最大人数もありますので事前に確認してください。
ご紹介した施設のほかにも、輪島塗の各工房で体験や見学ができる場合があります。
もちろん田谷漆器店でも、工房見学や輪島塗の製造体験を行っています。
実際の商品をご覧いただくこともできますので、ぜひお越しください。
知れば知るほど興味が出てくる!輪島塗を実際に使ってみよう
輪島塗が持つ魅力について紹介しました。華麗で優美な加飾や、美しい艶を放つ漆器。ぜひ、実際に使ってみて欲しい逸品です。
輪島塗をご覧になりたい方は、ぜひ一度田谷漆器店にお越しください。
輪島塗漆器の老舗専門店「田谷漆器店」では、輪島塗の通販のほか、法人のお客様向けに輪島塗を使用した商品開発・OEMやノベルティの製作を行っています。
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