「全日本人味噌汁椀輪島塗化計画」ブログでは、輪島塗の食器をもっと普段の食卓で使ってほしいと願い、とくに味噌汁椀こそが輪島塗の魅力が一番伝わると考えている田谷漆器店・田谷昂大が、輪島塗の良さや使い方、お勧めのアイテムなどをご紹介していきます。今回は輪島のある石川県の県庁所在地、金沢と輪島塗の関係についてお話しします。
日本を代表する漆器（しっき）ブランドである
輪島塗（わじまぬり）の産地、石川県。
江戸時代にこの地を治めた加賀藩は「加賀百万石」と言われ、
日本随一の国持（くにもち）大名として全国に名を馳せた存在です。
城下町・金沢ではその影響を受けて伝統工芸品や文化芸術が発展。
輪島塗もその一つといえます。
そこで、今回は「華麗なる一族」加賀藩によって開花した
金沢の伝統文化と輪島塗のカンケイについてお話しします。
目次
1. 幕府にニラまれないよう、輪島塗など文化芸術が発展？
2. 輪島塗は加賀藩のステイタスシンボル
3. 金沢の『CRAFEAT（クラフィート）』で出会う、はじめての輪島塗
1. 幕府にニラまれないよう、輪島塗など文化芸術が発展？
先ほど「加賀百万石」とお伝えしましたが、実際の石高は119万5000石。
加賀、能登、越中3カ国のほぼ全域におよびました。
これだけの領地を統治していた加賀藩ですから、当時の徳川幕府にとっては油断できない存在として「いつか反旗をひるがえすのでは？」と、常に警戒されていたようです。
一方、加賀藩主である前田家にしてみれば、思わぬ疑念の目を向けられて困ったなぁ。との心境だったでしょう。
「俺たちはいっぱいお金あるし、江戸に攻撃を仕掛けるキャラじゃないよ♪」
と言ったかどうかは定かではありませんが（笑）、
文化事業への尽力をアピールすることで
徳川幕府の警戒をやわらげようとしました。
こうして、輪島塗のような漆器をはじめとする
蒔絵（まきえ）や象嵌（ぞうがん）などの高度な技術が発展。
加賀藩独特の世界観が城下町・金沢で確立され、輪島塗以外にも山中漆器（やまなかしっき）、九谷焼（くたにやき）、加賀友禅（かがゆうぜん）などの伝統工芸が現代へと受け継がれてきたのです。
■Point
思わぬ理由で培われた、高度な伝統工芸
2. 輪島塗は加賀藩のステイタスシンボル
また江戸時代、各地の大名に課せられていたのが「参勤交代」です。
その費用は想像を絶するほどで、加賀藩にいたっては片道だけで約５億円も掛かったそう！
これだけでも驚きですが、参勤交代の際には「日本一リッチな外様大名」の威厳を保つため、豪華絢爛な輪島塗のキセル（刻みたばこを吸う喫煙具）などを携帯して、江戸に参上したとか。
このように、輪島塗は加賀藩のステイタスシンボルとして位置づけられ、高級漆器として認識されるようになっていったのです。
■Point
「ステイタスに見合うモノを持ちたい」心理は、いつの時代も同じ
3. 金沢の『CRAFEAT（クラフィート）』で出会う、はじめての輪島塗
こうした歴史的背景によって繋がってきた金沢と輪島塗ですが、
金沢市内で輪島塗に触れられる機会は意外と少ないのが現状です。
時代劇に出てくる骨董品のような漆器ではなく、
もっと洗練された、ハートをグッとつかまれるような
現代感覚の輪島塗を提案したい。
そして実際に使ってみていただきたい。
そんな思いから、私ども田谷漆器店は
金沢にアンテナショップ的拠点をつくりました。
店名は「craft（伝統工芸品）」と「eat（食）」を掛け合わせた
『CRAFEAT（クラフィート）』。
石川県の伝統工芸品である輪島塗や九谷焼などの高級食器を使い、県産食材にこだわった和食やお酒を楽しんでいただけるお店です。
店内にはギャラリースペースを設け、石川県内の伝統工芸品をご購入いただくこともできます。
金沢にいらっしゃる機会がありましたら、“ひがし茶屋街”や大名庭園 “兼六園”などの名所で加賀百万石の歴史に触れたあと、『CRAFEAT』で輪島塗を手に取っていただき、その美しさや使い勝手の良さを体感していただけましたら。
さらに輪島塗への興味が深まった際は、輪島塗のふるさと・輪島市にも足を伸ばしてもらえたら、こんなに嬉しいことはありません。
■Point
金沢散策と輪島塗体験で加賀百万石の歴史に触れる
【田谷漆器店・田谷昂大】
