「全日本人味噌汁椀輪島塗化計画」ブログでは、輪島塗の食器をもっと普段の食卓で使ってほしいと願い、とくに味噌汁椀こそが輪島塗の魅力が一番伝わると考えている田谷漆器店・田谷昂大が、輪島塗の良さや使い方、お勧めのアイテムなどをご紹介していきます。今回は輪島塗の弁当箱です。
「今日の中身は、何だろう?」
遠足や学校のお昼休み、ワクワクしながら
お弁当箱のフタを開けた記憶がありませんか?
新入学や就職を前に弁当箱を探している方
新生活を機にお弁当箱デビューしようと考えている方。
そんな皆さんにオススメしたいのが
輪島塗の弁当箱です。
輪島塗の弁当箱は、抜群の強度と、優れた抗菌作用を持っています。
そのため、冷暖房の効いた環境から外に出るなど温度や湿度の変化が多い
通勤、通学、遠足などでも大変重宝されています。
今回は輪島塗の弁当箱、その魅力についてご紹介しましょう。
目次
1. 輪島塗の弁当箱なら、朝から詰めたサンドイッチが夕方までしっとり
2. 強度バツグン! 輪島塗の弁当箱は、丈夫で長持ち
3. タイプ別・あなた好みのお弁当箱は?
●小判型弁当箱 二段 飛花
●二段弁当箱 入子
●おむすび弁当箱
4. ほかにもこんな使い方で、お弁当箱の使い道が広がる
1. 輪島塗の弁当箱なら、朝から詰めたサンドイッチが、夕方までしっとり
輪島塗の弁当箱の利点としてまず挙げたいのが、
最適な湿度や温度をキープしてくれること。
プラスチック製の弁当箱を使われている方も多いと思いますが
密閉性は高い半面、湿気がこもってしまい
ご飯やおかずがベチャッとしてしまったこと、ありませんか?
輪島塗の弁当箱の場合、下地に使う珪藻土と木には保温性があり、
これらに塗り重ねた漆(うるし)が
湿度・温度をほどよくコントロールしてくれます。
こうした特性を発揮してくれる弁当の中身として
意外にも好相性なのが、サンドイッチ。
朝から弁当箱に詰めておいたサンドイッチを夕方食べようとしたときも
パンが乾燥せず、しっとりした口当たりが楽しめます。
さらに前述の通り、漆には抗菌作用があるので、長時間保存にもってこい。
食あたりが心配な梅雨の時期などにうってつけです。
すべて自然由来の素材で出来ていて、
安心して使い続けられる点もポイント。
■Point
自然由来のチカラで、美味しい状態を長時間キープ
2. 強度バツグン! 輪島塗の弁当箱は、丈夫で長持ち
そしてもう一つの利点といえば、
輪島塗の伝統技法によってもたらされた、丈夫さ。
プラスチック製だと電子レンジを使用したり
そのまま冷凍保存できるものもあり、メリットはあるものの
そのぶん、劣化しやすく
ちょっとした衝撃で割れたり、ヒビが入ったり。
寿命はさほど長くありません。
ちなみに、輪島塗の弁当箱を購入されたお客さまから
「表面に傷が入らないか心配」
との声をいただくことがありますが
漆に包まれたデリケートな見た目に反して、
輪島塗の強度は想像以上。
「塗る、乾かす、研ぐ」といった作業を繰り返して頑丈な下地を作った後、
ぽってりと奥行きある艶を出すために、高純度な漆で中塗りと上塗りを施し、ようやく完成。
時間をかけてしっかり固まった漆で覆われていますから、
少しぐらい手荒く扱ったところで、容易に傷が入ったり割れたりといった心配はありません。
下地や中塗り、上塗りなど、輪島塗の強度を支える製造工程については、
こちらの記事で詳しく説明しています。
■Point
じっくり手間ひまかけた漆の“プロテクター”が、キズ・割れからガード
3. タイプ別・あなた好みのお弁当箱は?
このように、保温・保湿性や抗菌作用、丈夫さを兼ね備え、
機能性に富んだ、輪島塗の弁当箱。
では、どのようなものを選べば良いでしょう?
田谷漆器店で取り扱っている弁当箱を例に、
それぞれの特長をご紹介します。
まずは、こちら。
●小判型弁当箱 二段飛花
鉄のノミで漆器に傷を入れ、そこに金を埋め込みタンポポの綿毛を彫り描いた「沈金(ちんきん)」技法を施しています。
サイズは横14.5×縦9.5×高さ8.5cmと、やや小ぶり。
タンポポの綿毛はどこに飛んでいっても芽を生やすことから「何をしても成功する」との意味合いがあります。
輪島塗らしい優美さが感じられる、私のイチオシです。
受注生産で承っているため3カ月ほどお時間をいただく場合がございますが、在庫状況によっては当日発送も可能ですので、気軽にお問い合わせください。弁当箱の内側は、赤または黒からお選びいただけます。
続いては、こちら。
●二段弁当箱 入子
シンプルで毎日使っても飽きのこない弁当箱。
幅が狭いぶん学生カバンやビジネスバッグに入れやすく、食べ終わったら一段に収納できるのもポイントです。
サイズは、横20.0×縦8.5×高さ10.0cm(収納時は高さ6.0cm)。
色は「本朱」という黒みを帯びた朱で、落ち着きと品格のある仕上がりとなっています。色を黒に変更することもできます。
こちらも「飛花」同様、受注生産となります。工房の状況によっては3ヶ月ほどお時間をいただく場合もございますが、在庫状況によっては当日発送も可能ですので、お問い合わせください。
最後に、こちら。
●おむすび弁当箱
その名の通り、コロンとしたフォルムが可愛らしい、おむすび型のお弁当箱。
薄くした板木を丸めて形作る「曲げわっぱ」という技術で作られています。板木をしっかり乾かして使っているので自然木特有の歪みが出づらく、末永く使っていただけるのが魅力。
と、ここまでご紹介しておきながら恐縮ですが、
実は現在、ご購入いただくことが出来ません。
この技術を保持しておられた木地師の伊藤さんが2017年に亡くなられ、
今後は同じものを作ることが出来なくなったからです。
ではなぜ、ご紹介したかといえば
需要の落ち込みや担い手不足によって、
こうした伝統技術が廃れつつあることを
皆さんに知っていただきたかったから。
一度途絶えてしまった技術を復活させるのは、容易ではありません。
ひとりでも多くの皆さまに、輪島塗を実際に手にしていただくことで
ホンモノを使う喜び、暮らしにもたらす豊かさを実感してもらえればと願っています。
■Point
技術が廃れれば入手困難に。輪島塗の弁当箱は、一期一会
4. ほかにもこんな使い方で、お弁当箱の使い道が広がる
ちなみに私が通った高校は学食だったので、コッソリ早弁する楽しみ(!?)を経験できませんでしたが、弟ふたりは母の手料理が詰まった輪島塗のお弁当箱を毎日持参していました。
そして彼らが高校を卒業した後、役目を終えた弁当箱はどうなったか?
現在は、ふた付きの菓子箱として活躍しています。
クッキーなどの焼き菓子を入れておけば
湿気や乾燥を防いでくれますし
不意のお客さまへお菓子をお出しする際も見映えが良く、
おもてなしの心が伝わるように思います。
工夫次第で使い道が広がる、輪島塗のお弁当箱。
目的にあわせて、あなたのお気に入りを見つけてみてください。
【田谷漆器店・田谷昂大】