「全日本人味噌汁椀輪島塗化計画」ブログでは、輪島塗の食器をもっと普段の食卓で使ってほしいと願い、とくに味噌汁椀こそが輪島塗の魅力が一番伝わると考えている田谷漆器店・田谷昂大が、輪島塗の良さや使い方、味噌汁椀をはじめとするお勧めのアイテムなどをご紹介していきます。
輪島塗の漆器はお手入れが大変そう……。そう躊躇される方もいらっしゃいますが、そんなことはありません。
一見するとデリケートで傷つきやすそうに見えますが、一般的なガラス器や陶磁器と比べて、とても丈夫ですし、手入れもいたって簡単です。ただし、自然素材のみで出来ていることから、ちょっとした扱い方のコツも必要に。
そこで今回は、輪島塗の漆器を長く愛用するために知っておきたい、お手入れや注意点、保管方法についてご紹介します。
目次
1.輪島塗の洗い方は、たったコレだけ
2.輪島塗のお手入れで「やっちゃった!」を防ぐには?
3.輪島塗は日陰が好き
1.輪島塗の洗い方は、たったコレだけ
輪島塗のお手入れについて、ひと言で言ってしまうと
柔らかいスポンジと中性洗剤で優しく洗う。これでOKです。
えっ、これだけ!? そう、これだけ。
そもそも輪島塗は日常づかいの器として発展してきた漆器です。使われている国産漆は非常に優れた天然の塗料で、酸やアルカリ、さらに熱湯や湿気にも強い。少しばかり手荒く扱ったところで、簡単に割れたり欠けたりすることはありません。
お手入れについて少し補足すると
●食事をした後は早めに洗う
(漆器以外も同様ですが、食べ残しが固まって落としにくくなるため)
●ほかの食器やカトラリーと分けて洗う
(ガラス器やフォークなどと一緒に扱うと、微細な傷が入るかもしれないので)
●水よりぬるま湯で洗うと乾く時間がはやい
あたりでしょうか。
以前は「洗剤を使わず、柔らかな布で洗う」とも言われていましたが、洗剤なしだと洗い残しが傷みの原因になる場合があり、衛生面も気になるところ。
また、「洗ったらすぐに水滴を拭き取る」とも言われますが、ぬるま湯で洗うと乾きやすく、水滴のあとも残りません。年に一度しか出番のない屠蘇(とそ)器などは、しっかり乾燥させてから箱にしまうと良いですが、日常づかいの輪島塗であれば、ほかの食器と同じように、安心して使ってください。
ちなみに新品の漆器を使い始める際、少なからず漆特有のにおいが残っています。しばらく使っていくうちに消えていくものですが、気になる場合は「米びつの中に数日間入れておく」、「米の研ぎ汁で洗う」といった方法があります。
■Point
国産の天然漆は酸やアルカリ、熱湯や湿気にも強い
2.輪島塗のお手入れで「やっちゃった!」を防ぐには?
このように、輪島塗のお手入れは、意外とシンプル。しかし、自然素材で出来た輪島塗ゆえの弱点もあります。そこで、長くお使いいただくための注意点をいくつかご紹介したいと思います。
まず一つめは、「乾燥」。
気候による乾燥程度であれば大丈夫ですが、絶対に避けてもらいたいのが「食器洗浄機」「食器乾燥機」「電子レンジ」による乾燥です。
食器洗浄機と食器乾燥機の場合、熱風を使って食器を乾燥させますが、輪島塗はこれが大の苦手。うっかり乾燥機にかけてしまうと漆本来のツヤを損ない、白く濁った色に変化してしまいます。
「そうとは知らずに変色させてしまった!」という場合も、救済策があるのでご安心を。
食器洗浄機や食器乾燥機であれば、影響を受けているのは表面の漆の部分ですから、上塗りすれば元のツヤを取り戻すことができます(ただし、加飾が入っている場合は、修復作業も必要)。
しかし、電子レンジとなると厄介です。
漆器の芯となる器の材質は木製ですが、そこに歪みが生じるため、まわりを補強する下地や、表面の漆も影響を受けることに。たとえ漆を塗り直しても、また歪みが生じる恐れがあり、繰り返し修復が必要となってしまうのです。
ですから、くれぐれも電子レンジだけは使わないよう、気をつけてください!
■Point
輪島塗は、家電ではなく「手」でお手入れを
3.輪島塗は日陰が好き
次に気をつけたいのが、太陽光などによる「紫外線」。
直射日光の当たる場所に長く放置することは避け、日当たりのいい場所で乾燥させたい場合は、布などを被せておきましょう。
食器棚へしまう際は、ガラス器や陶磁器と重ねないのがオススメですが、収納スペースには限りがありますから、重ねる場合は上部に置くこと。漆器を重ねて保管する際には、キッチンペーパーなどを挟んでおくと、細かな傷を防ぐことができます。
これらの点に気をつけてお使いいただければ、たとえ10年使い続けても劣化を感じることはありませんし、むしろ使えば使うほど、漆が変化して風合いを増す。「育てる器」と言われるゆえんです。
下地の作業工程をしっかりと施しているのが輪島塗の強みですから、とことん使い込んで、いざとなったら塗り直せばいい。修理にかかる値段はお直しの内容によりますが、新品を買い直すよりずっとお得です。
田谷漆器店では、当店でご購入された商品であるかどうかに関わらず、漆器をはじめとする漆塗り全般のお直しをお引き受けしていますので、お問い合わせフォームから気軽にお尋ねください。
手入れをしながら、使い続ける。
環境破壊が身近な問題として影響している今、
モノを大切にする姿勢は、私たちの未来をつくっていくことに繋がります。
自然と共生しながら、日々の暮らしを豊かに楽しむ。
輪島塗がその橋渡しとなれば、嬉しいです。
【田谷漆器店・田谷昂大】