「全日本人味噌汁椀輪島塗化計画」ブログでは、輪島塗の食器をもっと普段の食卓で使ってほしいと願い、とくに味噌汁椀こそが輪島塗の魅力が一番伝わると考えている田谷漆器店・田谷昂大が、輪島塗の良さや使い方、お勧めのアイテムなどをご紹介していきます。
高級漆器と捉えられがちな輪島塗ですが、
本来は実用品。
実際に使ってこそ、その本領が発揮されます。
輪島塗をはじめとする伝統工芸品が何百年にもわたり残ってきた理由は、
伝統技法が継承されてきたから、とか、
美術品的価値があるからなどもあると思いますが、
「ユーティリティー」つまり、
使いやすいから残ってきた側面もあると思います。
機能性と機能美を兼ね備えた伝統工芸品がもつ「用の美」の魅力をたくさんの方に伝えたい。
そのためには、魅力を長々と説明するより、「体験」をしていただくのが一番かと思っています。
目次
1.「見る・作る」より先に体験してほしい輪島塗
2.本格和食を輪島塗で味わう体験ができる、金沢の新名所
3.「家で使う」を体験できる輪島塗のレンタル
1. 「見る・作る」より先に体験してほしい輪島塗
伝統工芸品の産地を旅すると陶芸や絵付けなどの製造体験が用意されていてみなさんも一度くらいやった経験があるのではないでしょうか?
私たち田谷漆器店では観光者向けの体験プログラムがあるわけではないですが、
リクエストをいただければ制作の様子を見学していただいたり、実際に工程の一部を体験していただいたりしています。
そうした見学・製作体験も確かに楽しいし、輪島塗に触れていただく一つの機会ではありますが、
それは、あくまで付随的なもの。
輪島塗の作り方について、ほんの一部を知っていただくだけで終わってしまう気がして、
ちょっと物足りなさを感じます。
作り手がお客さまに知っていただきたい輪島塗の「本質」とズレているから、かもしれません。
では、その「本質」は何かといえば
「使う」体験
です。
「輪島塗を実際に使ってみてよかった」
という体験が、欠落しているのです。
まずは使う体験をしてみて
「この器、どうやって作られているのだろう?」
と興味を持っていただき、
それをキッカケにして産地へと足を運ぶ。
制作現場を見学・体験する。
その方が、より輪島塗(あるいは伝統工芸品)
に対する理解が深まると思うのです。
■Point
「使う」体験こそ、理解を深める第一歩
2.本格和食を輪島塗で味わう体験ができる、金沢の新名所
まずは、輪島塗を使っていただきたい。
「使う体験」ができる場所をつくりたい。
そんな思いから、私たち田谷漆器店は2021年7月、
金沢に『CRAFEAT(クラフィート)』
という飲食店をオープンしました。
前回の記事でもご紹介したように、
ここでは輪島塗をはじめとする石川県の伝統工芸品を食器に使い、
石川県の食材を用いた本格和食をお楽しみいただけます。
また、併設するギャラリーでは
石川県の伝統工芸品を展示・販売。
店内でお食事された際、「これを家でも使いたい!」と気に入ったものがあれば、
同じデザインの食器をご購入いただくことも出来ます(販売していない食器もあります)。
本来、私たちのような「塗師屋(ぬしや)」は
輪島塗の漆器をプロデュース&販売することが本業ですが、一方で、
石川県の伝統工芸品を後世に残していきたい
との思いもあります。
『CRAFEAT』という拠点は、
そうした石川県の伝統工芸品を体験していただける
アンテナショップと位置づけています。
たとえば、
こちらは前菜としてお出しした八寸を
重箱に盛り付けたもの。
お重の蓋には
「桃太郎」、「花咲か爺さん」、「かぐや姫」、「かさ地蔵」といった日本昔話の文様が、
研出蒔絵(とぎだしまきえ)という技法でほどこされています。
このお重「日本昔話」は、田谷漆器店のサイトでも販売しています。
日常の食卓でお重を使っていただきたい、
との思いから、
季節に合わせて蓋を付け替えられるように、
ひとつの二段重に4種類の蓋がセットになっています。
実際の器に料理を盛り付けてみると、
食卓で使うイメージがしやすくなります。
もし金沢へ足を運ばれる機会があれば『CRAFEAT』の食事を楽しみながら、
輪島塗の使い勝手の良さを体験していただけると嬉しいです。
■Point
輪島塗で食事をしながら「こんな使い方があるのか!」を発見できる場所
3.「家で使う」を体験できる輪島塗のレンタル
『CRAFEAT』が「お店」で輪島塗を使う体験であればこちらは「お家」で輪島塗を使う体験。
2021年から輪島塗のレンタルサービスをはじめました。
かつて祖父母などの家には塗りもの(漆器)のお膳がたくさんありました。
お盆や正月に人が集まる際は、蓋付きのお膳が並んだりして、輪島塗などの漆器を使う機会がよくありました。
私は30代ですが、同世代や都会暮らしの皆さんは
漆器に触れる機会がないまま育った人も多いのではないでしょうか?
使った経験がないから、その良さが分からない。
となると、私たちのような作り手が
お客様に使っていただく機会を提供しなければ
本当の良さを知ってもらえないまま
「伝統工芸品」として終わってしまいます。
そこで思いついたのが、
輪島塗のレンタルサービスです。
たとえば、
定額レンタル「器」コース(個人向け)の場合、
1カ月あたり11,000円
(消費税込み、発送・返送代含む)。
輪島塗のお椀やお皿、カップなど10個お入れします。
福袋のように中身はお任せいただき、袋を開けてからのお楽しみです。
2名で使用される場合の1回あたりの送付内容例です。
なお、ご使用中に破損が生じても、費用はご請求しません。
思いきったチャレンジ企画ではありますが、
輪島塗の本当の魅力が
一人でも多くの方に伝わることを願って。
また、新型コロナウィルス感染拡大防止のために
全国で外出自粛が続いて2年あまり。
家で食事をとる時間が多くなり
輪島塗に盛り付けて召し上がっていただくことで
食卓がより豊かで華やいだものになることを願っています。
金沢の『CRAFEAT』やレンタルサービスなど
「使う」という体験を通じて
輪島塗と気軽に触れ合っていただきたい。
地道な活動かもしれませんが、
世界的に環境保護への意識が高まり
「良いものを長く使い続ける」価値観へと移行しつつある今。
こうして「本物」に触れ合っていただく機会を
作っていきたいと思います。
■Point
まずはレンタルで「輪島塗」を気軽に日常使い
【田谷漆器店・田谷昂大】